狂想曲


昼下がりのカフェでハーブティーをすする私。

向かい合う彼は犬みたいな笑顔でくしゃっと笑った。



「律さん、何かあった?」

「どうして?」

「だってハーブティーには気を鎮める効果があるっていうし。だから何かあったから落ち着きたくて意図的に飲んでるのかと思ったんだけど」


「違った?」なんて、レオは首を傾ける。

無邪気な顔して、鋭いことを。



「人のことを詮索するのが好きなのね、レオは」

「そうでもないよ」

「たまには私にも詮索させなさいよ」


言ってみたら、レオは急に「ぼくのこと?」と前のめりになった。



「レオ、百花とふたりで会ってるよね」


確信めいた聞き方をしてみたら、レオは驚いたとばかりに黒目がちな目を丸くさせる。

そしてふっと笑った。



「ももちゃんとは、別に律さんが勘繰ってるような関係じゃないよ。ただの友達」

「ふうん。ももちゃん、ねぇ」


随分と私の知らないところで仲よくなっているらしい。

私は少しだけハブにされたような気になった。



「律さんに内緒にしてたってわけでもないけど、言うほどのことでもないと思ったんだ。だけど、それが気に障ったなら謝るよ」


まるで私の思考を読んだみたいにレオは言う。



「私は怒ってるわけじゃないの。ただ、レオに聞きたくて」

「うん?」

「百花とどういうつもりで一緒にいるのか、ってこと」

「どういうつもりも何も、さっきから友達だって言ってるじゃない」


レオは困ったような顔をする。

私は息を吐いた。
< 139 / 270 >

この作品をシェア

pagetop