狂想曲


次に目を覚ました時には直射日光に照らされていた。



「あれ?」


出て行った時のままの家のリビングの床で、私は眠っていた。

午前9時を指す時計の針。



「……夢?」


いや、そんな馬鹿な。

両手首に薄っすらと残された赤みと、痛み、そしてリアルに思い出せるあの時の恐怖感。


じゃあ、何で私ここにいるの?



「おー、起きた?」


びくりとして振り返る。

寝起きらしい奏ちゃんがあくび混じりに頭を掻いていた。



「奏ちゃん!」

「お兄様と呼べ」

「奏ちゃん! 私何やってた?!」

「は?」

「だから私何でここにいるのかって聞いてんだってば!」

「いや、そりゃあ自分の家だからでしょ」

「そうじゃなくて! 何で私ここで寝てるの?! いつから?! どうして?!」


まくし立てる私に、奏ちゃんは「わけわかんない」と言いながら、



「そんなの俺が知るわけないじゃん。律、俺が帰って来た時にはもうそこで寝てたし」

「え?」

「俺、一応『ベッド行けよ』って声掛けたけど、全然起きる気配なかったから放っといたんだよ」

「そんな……」

「何? 飲み過ぎて記憶ない系?」

「………」

「ほんとありえないっしょ」
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