雪解けの頃に
 この短い文章だけで理花の心を打ちのめすには充分だった。
 


 頭の上から冷水をバケツごと浴びせられたようでもあり。

 硬く重たい何かで突然後ろから思い切り殴られたようでもあり……。
 

 例えようのない衝撃が理花の全身を襲う。


―――な……んで?

 なんで、雄一からの手紙にお母さんの手紙が入ってるの?



 理花の頭の中が真っ白になった。

 目の前は真っ暗になった。



―――どうして……?

 どうして、雄一の手紙に続きがないの?



 再び便箋を持つ理花の手が震え出す。

 その震えは先ほどのものとは比べ物にならない。
 
 
 指先だけではなく、肩も、足も、がたがたと震える。

 あまりの震えに、カチカチと歯が当たって音を立てる。

 
 背筋に冷たい汗が流れ落ちる。

 額には嫌な汗がじっとりと浮かぶ。

 手紙を持つ指先が痛いくらいに冷たくなる。

 

 自分でも分かるほど、顔から血の気が引く。
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