雪解けの頃に
 雄一は毎年、理花に二月の誕生石のついたアクセサリーを用意していた。

 指輪や、ネックレスにピアス。

 ……そして今回のブローチで7個目。

 
 それが、2人で重ねた年月の証。


『メッセージカードは自分で書きたかったそうですが、すでにペンを握るほどの力も残されてはいませんでした。
 
 なので、雄一が囁いた言葉を主人がパソコンで打ち出し、印刷した物を同封しました。
 

 いつも、カードの類は必ず自筆なのにどうして今回だけパソコンで書いたのかと理花さんが怪しまないように、

“最近新しくパソコンを買ったから、ためしに使ってみた”

 という一文まで添えて。

 
 雄一はいつもあなたのことを気にかけていました。
 
 今の自分の状態を悟られないように、こちらが驚くほど気を遣っていました。


 そこにはただひたすらに、あなたのことを思いやる雄一がいました』




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