天体観測
僕の説明に、誰よりも反応したのは、他でもなく母さんだった。その激昂ぶりは、過去最大だった。僕は右の頬を叩かれ、マスターは左の頬を殴られた。

「何もここまでせんでええやんか」と、マスターが左頬をさすりながら言った。

「冗談じゃないわ。あなたはどれだけ司に危険なことをさせたか、わかってるの」

「司が望んだことやんか」

「子供の望むことが百パーセント子供のためになると思っているの?」

「抑制するのもどうかと思うよ。僕は」

「話にならないわ」と、母さんは、標的を僕に切り替えて、睨みつけてきた。その顔は神目薫のそれよりも、ずっと恐ろしい。

「何か弁明することでもあるかしら?司くん」

「僕は、間違ったことをしたなんて、思ってない」

「なんですって?」

「全部、自分が納得してやったんだ。それを間違っているなんて言われたくない。僕がやったことは、百パーセント僕のためになる」

母さんが振り上げた右手が、僕の左頬に当たることはなかった。僕が恐る恐る目を開けたとき、僕と母さんの間に、恵美がいた。

「止めましょう。無事に帰ってきたんやし、いいじゃないですか」

母さんは、右手を下ろして、「恵美ちゃん言われたら、何も出来ないわ」と言って、ダイニングの椅子に座った。

恵美が、半笑いの顔で僕を見て、小さな声で言った。

「助かったやろ?」

「かっこ悪いじゃないか」

「誰にも言わんって」

「恵美がそうでも、あの人がね」

僕は顎で、未だに母さんに怒られているマスターをさした。

「なるほど」と笑いながら、恵美も椅子に座ったので、僕も、恵美の隣に座った。

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