君を愛する
 ちゃんと受け止められるようになったのに一年もかかってしまったけど、今となっては苦しい時も楽しい時も全部良い思い出になっている。
 修二は目には見えないけど、ちゃんと私の心の中でずっと生き続けるんだ……。
 そんなことを考えていると、今年新しく入園する園児が整列して入場してきた。
 親たちは拍手をしながら迎えると、優人の姿が見えたので私はデジカメを取り出した。デジカメを優人の方に向けると、数回シャッターを押した。
 写真を撮り終えると、入学式が始まった。幼稚園の入学式だからか、思ったよりも時間はかからなかった。
 入学式が終わり優人のもとへ駆け寄った。優人の手を繋ぎながら歩きはじめると、私は優人に話をかけた。
「優人、入学式はどうだった? 明日から楽しみだね」
「うん、楽しみ」
 優人の返事を聞くと、私は繋いだ優人の手を大きく振りながら帰路についた。
 次の日から早速幼稚園が始まった。朝家の前まで幼稚園のバスが迎えに来てくれるので、私は大学に行く前に優人のことを送り出し、優人のことを送り出すことが毎朝の日課になっていた。
 そんな日々が続き、私は勉強と優人の育児に奮闘した。
 そして修二の死から早三年が経とうとしていた頃、私は大学四年生になっていた。優人も小学校に入学するほど成長していた。
 しかし、そんな喜びに浸っている暇は私にはなかった。毎日就活をしていて、尚且つ優人の育児という今まで以上に大変な毎日を送っていた。
 就職氷河期ということもあって、中々就職先が見つからないでいた。
 毎日合同企業説明会に参加したり、就職面接に臨んだりした。この時期になると皆が顔色を変えて就活をしているので、私も心の中では相当焦っていた。
 そんなある日、私に朗報が届いた。大学から帰ってきて家のポストを見ると、ある会社から封筒が届いた。
 私は何だろうと思いながらもその封筒を手に取り、自分の部屋に戻った。そして机から鋏を取り出しその封筒を開けた。
 封筒には数枚の紙が入っており、私はもしやと思い急いで封筒から紙を取り出した。私の目には就職内定という言葉が飛び込んできた。
 私は思わず笑みが零れた。就職内定という言葉が書かれた紙を急いでお母さんに見せにいった。
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