一人睨めっこ

十節 貴方

『ええって何よ……』

 真奈美はそう呟いて俺達に背を向けた。
 俺の心臓はあり得ない程に大きな音を立てている。
 心臓が破裂するんじゃないか、はたまた口から飛び出そうだ。
 顔が熱くなるのが分かる。

「……ちょ、んな…………え!?」

 何か言おうとしたが、上手く言葉にならなかった。

 この雰囲気……俺の返事待ち!!?

 生まれて初めての状況に、対処出来ない俺。

『別に、最初は何とも思ってなかったけどっ』

 真奈美が取って付けたように言った。

「あの……その――そういえば真奈美! 優兄好きって言ってたのに……」

 優兄を見た瞬間『好み!!!!』とか言ってたのを確かに覚えている。

『あれは、恋愛感情じゃなくて――ただ優様が』

 結局、優様って呼んでるのか。

「優様が??」

 あ、俺まで優様って言っちゃった。

『…………』

「………?」

 少しの沈黙。
 そして、

『ただ優様がお母さんに似てたから気になっただけ!!』


 ……
 ………………
 ……お母さんって…………。

「あのクールな外見の何処が母親なんだよ!!」

 どっちかと言うと爺ちゃんだろ!!
 どんな母親だよ!!
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