一人睨めっこ
『なっ……や、やめてよ!!』

 葛西は俺から離れようとする。
 俺は離さない。

「葛西……」

 名前を、呼ぶ。

『言っとくけど、同情なんていらないから!!』

 葛西はまだ抵抗する。

「ううん、凄いよ」

『――――は?』

 葛西が抵抗を止めた。

「嫌いな人の死を、悲しむ事が出来るんだろ? それって凄い」

『…………っ』

「頑張ったな」

 自然と俺の口から言葉が出てくる。
 それは全て真実だった。

『……お母さんに、言いたかった』

「うん」

『産んでくれて、ありがとうって――』

「きっとお母さんに聞こえてるよ」


『ん、ありがとう――』

 葛西の震える手が、俺の腰にまわった。

「あ……泣き終わるまで、こうしてていいから」

 ぶっちゃけ、俺の心臓は爆発寸前だけどな。
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