Distance of LOVE☆
「奈留っ…!」


オーナーの両親と入れ替わるように入ってきたのは、奈留の…父親だった。


「お父さんっ…」


「こんにちはっ…」


俺も慌てて、頭を下げた。

「……こんにちは。
…ビックリだったよ。
まさか奈留も…こんなことになるとはな…
でもまぁ…奈留と雅志くんなら、私たちのようにはならないだろう。」


「あの…お父さん…
私たちみたい…って…?」

話せば長くなるというが、奈留のためにも、ぜひ話してほしい。


「……お父さん。
話していただけますか?
僕と奈留が同じような失敗を繰り返さないためにも。」


俺がそう言うと、奈留の父親が一瞬だけ微笑んでから話し出した。


奈留のお父さん…星哉さんは、朱音さんの2度目の妊娠が判った直後に破産により職を失った。


そこで…朱音さんに、自分から子供の中絶を申し入れた。


それから、自分がこれからどうすればいいのか…病院にいる朱音さんの主治医…つまり、さっきエコー写真を渡してくれた院長さんに相談に行って…

自宅に電話を掛けたが応答する様子がないことから、2人で家に行くと…

朱音さんが倒れていた。

中絶が相当ショックだったのだろう、睡眠薬自殺を図ったらしい。

幸い未遂に終わり、朱音さんの覚悟を目の当たりにした星哉さんは、
2人で子供を育てる決意をした。


そして…数カ月後、奈留が誕生した、ということだ。


その話を聞いた奈留は、ふいに起き上がってベッドから降りた。

父親の話に感動したのか、目が赤く腫れている。

知ってるよ。
母親に…謝りに行くんだろ?


「そんな顔で行くの?」


うるさいっ…なんて照れる奈留の涙をそっと服の裾で拭ってやると、一瞬だけ抱き寄せた。


行ってらっしゃい。



しばらくして病室に帰って来た奈留は、俺たちにピースサインを向けた。

無事、仲直りできたみたいだ。


もう、窓の外は明るくなってきていた。
時差があるとはいえ、ほぼ徹夜だ。
女の子に、徹夜はマズイ。

「寝てな?
疲れたろ?
手術後だし…」


そう言っている途中にも眠りに堕ちている彼女に、そっと布団をかけてやった。
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