Distance of LOVE☆

しかし…なりやまないアンコールを求める声。

持ち歌のストック…あるのか？


そんなことが、頭をよぎった、そのとき。
悠月が、とんでもないことを言い出した。


｢和。
お願いがあるの。｣


｢何？
ゆづのお願いなら、いくらでも聞いてあげるよ｡｣


｢私と和…アンコールのステージにあげることって…出来ない？
私ね、一時期春香の誘いで某気象系グループのコンサートのバックで演奏するオーケストラメンバーやってたの。
そのときの曲の楽譜…念のためにアルプスさんに渡しておいたはずなんだけど。｣


悠月…そんな仕事やってたんだ…

って、驚いてる場合じゃない、アルプスさんにヘッドセットを使ってそのことを伝える。


『あれは悠月ちゃんの楽譜だったのか。
大丈夫。
僕たちもプロだからね。
下手から上手側のソデ来れるよね？』


｢任せて。｣


それだけ言って、悠月と２人で、上手側に向かう。


あ、いいこと思い付いちゃった。


｢アルプスさん｡
先にステージに上がってて。
んで…照明をさ、一部分だけ…消してくれない？
そうだな、ピアノの周りを。｣


アルプスさんからの了解の返事。


アルプスさんがテンション高めに観客と盛り上がる。

僕は悠月に向かって、ピアノを弾くジェスチャーをしてから､親指を立てる。


わざとらしく音をたてながら僕はギターを弾く準備。

｢真剣に話してるのにうるさいな～｣


アルプスさんの台詞とともに点灯するスポットライトに、僕と悠月が照らし出される。


悠月が丁寧に、ピアノのイントロを弾く。
僕は後半部分のギターソロ。
アルプスさんも見かけによらず伸びのいい高音な声。
このアンコールで、本当にコンサートは幕を閉じた。