【短編涼話】 十物語
夕暮れの中、一人の老女が呟く。

『いいかい、新月の夜は桜に近づいてはだめだよ。六道が開いて黄泉の神様がやってくる。それは恐ろしい倍返しの神様。支払う魂は、他人と自分の二人分。一度目を付けられた魂は、食べ頃になるまで育てては、あの世に必ず連れてってしまう。だから、決して声を聞いてはいけないよ。心の中を覗かれてしまうからね。』

倍返しの神様は、人間をこよなく愛してる。

永遠に消えることはない人の持つ欲を、愚かしいと思いながら。

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