【完】そばにいるだけで



それからというもの、桐生くんと仲良くなりたい女子は、



「ここがわかんないんだけど、教えてくれない?」



という口説き文句で、彼に近づこうとする子たちが現れた。



その中の一人、城山さんに、わからないところを教えてあげている様子を離れたところからうかがっていた時、頭が良いために説明を端折(はしょ)るので、彼女は彼の説明では理解できないようだった。



少しでも会話の糸口を見つけたくて、したくもない勉強をネタに話しかけても、必要なことしか話さないし、自分のことはまったくと言っていいほど口にしないので、会話が続かないようだった。



彼はリクエストされれば一応は応じているようだったけれど、楽しそうな様子はなく、ただ淡々と頼まれたことをこなしている、といった感じだった。



次第に、桐生くんに冷たい印象を抱く女子が少しずつ増えていった。





そして無口な彼は、いつしか女子の間で『サイレント王子』と囁かれるようになった。





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