【完】そばにいるだけで



「ごめん。待った?」



「ううん。僕も今来たところ」



わたしを見下ろすふんわりとした笑顔に、釘付けになりそうだった。



いちいち素敵な桐生くんが自分の彼氏だなんて、まだ信じられない時がある。



「じゃ、行こうか」



「うん」



わたしは桐生くんと並んで、映画館に向かった。



時々、桐生くんの腕が自分の腕に当たる。



それだけでドキドキするのに、どこかで「手をつないでくれないかな」と期待している。



自分からつなぐ勇気はないから。


< 93 / 207 >

この作品をシェア

pagetop