独:Der Alte würfelt nicht.
 
 
「黒羊は色々便利なのだよ。人の頭脳が100年かけて理解できる知識を、数秒で済ませられる。人の身では到達できない領域にいけるんだ。お前たちが血眼でお家騒動している間、まさかそんなブラックボーンが現れるとは思っていないだろう」

「まだ…子供だろ!?それにローズだってまだ幼いじゃないか!!こんな子をマークの跡継ぎに…?馬鹿らしい…どれだけ知識があったとしても…当人のカリスマ性が無ければ、周りは付いてこない。暴動が起きて、内部分裂するのは目に見えてる」

「馬鹿はお前だ。ストークスの人間は皆、野心に溢れ、血縁関係の無い養子も次期当主の座を狙っていると言うのに…お前はなんだ。本妻の子でストークス当主の血統、十分お前の兄弟を蹴落とせる素材だ。お頭の方は別にして…だが。お前と同じ純粋な血統を持つ人間は…2人だけだろう。何故身を引いた」

「それは――今は関係ない話だろう!?以前も言ったが、その話は二度とするなと念を押した筈だ!お前の興味本位で答えられるような内容ではないッ!!」


シャーナス将軍が俺にまだ“優しかった頃“にそれとなく聞かれた事を思い出す。

正当な血統を持つのは俺と…軍幹部に席を持つ兄さんだけだ。

俺には正妻の息子ではない兄が6人と、姉が4人、弟が2人、妹が3人と…養子が5人いる。

現当主を選抜した際、当主候補から外れた叔父や叔母が下剋上を果たすために育てあげた逸材達。

何のプレッシャーも無く、幼い頃何度も兄の勉強の邪魔をしてきた俺とは大違いだった。


「ふむ、そんなに嫌か。ならば…真相を話して頂けると言うのなら――君の大好きなローズちゃんにこの施設からの退院を許可するとしよう」

「…そ…れは…本当か!?もうローズを…解放してくれるんだな…!」

「そもそも私にそんな趣味は無い。必要があったから手元に置きたかっただけだ。だが私の傍に居るより…お前の所に居る方が何かと便宜が図れるからな」



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