お嬢様の秘密
-玲央side-


俺は、夏菜とユリが中に入ったのを確認した後、俺は話しかけた。


「兄貴。夏菜とユリにはまだ言ってないのか。」


「ああ。だから、お嬢様と夏菜様の前ではお前のことを『玲央様』と呼んでいるだろ。」


「言わなくてもいいのか?」


「言うとすれば奥様と会長様にご相談をしなければいけないし....。」


2人には隠していたが、桜井理央は俺の兄。


俺より8歳年上の24歳。


俺の家、桜井家は代々秋本家に仕える執事の家柄。


だから、将来的には俺も親父や兄貴たちみたいにイギリスへ行くつもり。


まあ、普通は長男だけがあとを継ぐんだが、執事になるのは俺の意思。


俺達はユリの屋敷の中の空き部屋に入った。


「なあ知ってるか。秋本家の執事はSランクしか仕えることが出来ないって。」


「それは知ってる。それが?」


「会社を継ぐ次期候補に仕えるのは長男じゃなくてもいいんだぞ。」


「それは知らなかった。じゃあ俺にも可能性はあるのか?」


「そうだ。その他は秋本家の他の方にお仕えするだけだ。」


「そうか....。」


「ただし、Sランクだった場合だけな。」


Sランクという言葉をもう1度念押しされた。


「じゃあ..Sじゃなかった場合は?」


「どっかの家に養子に出されるか、後継者作りに力を入れるか....。」


「ふーん....。」


俺の家はSランク執事しかいないからランクには厳しい。


過去にSランクを取れなくて家を捨てた人もいるという言い伝えみたいなのも残っているほどだ。


兄貴と話していたその時、ユリから電話がかかってきた。


「玲央?そろそろ時間じゃない?どこにいるの?」


「1分待て。」


「うん?わかったわ………急いでね。」


俺は兄貴に合図して何食わぬ顔でユリの部屋に戻った。


「お待たせして、申し訳ございません。ではすぐに参りましょう。」


改めて思った。


やっぱ兄貴は執事だ。


8歳上なだけなのに全然違う。


「ねぇ?玲央?どうかしたの?」


「あ....あぁ別に。」


「変なの。あ、遅刻しちゃうよ?急がないと。」


「では学校まで飛ばしましょう。」


俺らは秋本家のリムジンに乗った。


「俺...。執事になれんのかな.....。」


誰にもばれないよう1人、窓の外を見ながら呟いていた....。


-玲央side end-
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