お嬢様の秘密
「浅井、もう離れろ。十分だろ。」



少しイラッとしたような声。


この声は……。


「葵……。」


私が姿を消す前に会っていた最後の人。


「葵……無事で、無事で良かった……。」


「それはこっちの台詞だ!」


いつの間にか夏菜が離れていた。


夏菜は私の方を見て微笑んでいる。


私は腕を葵に引っ張られ胸に引き寄せられた。





「心配したんだぞ!!………無事でよかった…………」


「ごめんなさい…。」


「謝るのは私です。ユリ様。」


美穂はさっきからずっと頭を下げている。


「いつまでもここにいるわけには行きません。出ましょう。」


「そうだな。」





ーグラッ……


足に力が入らない…………。


フラついた私の体を葵が受け止めてくれた。


「ユリ!?」


「浅井、俺が運んでいくから先行け。みんなを連れて来い。」


「分かった。美穂、行きましょう。」


「葵様…道は…。」


「分かるから大丈夫だ。」


葵が目配せすると2人は出口へと急いだ。


「ユリ………俺がしっかり付いてるから安心してくれ。」


「うん………ゴメンね………。」


「謝んな。お前は何も悪くねぇぞ。」


「そっか………。」


頭をポンポンと撫でてくれた。


今までのずっと不安だった気持ちが一気に晴れていくようだった。


私の記憶はここまで…。


私は葵の腕の中で気を失ってしまった。
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