お嬢様の秘密
それから5分後…。


「着きました。お嬢様。」


はぁ....。


なんかずいぶん歩いたな....。


こんなに歩くなら新しいローファーにしなきゃよかった。


って言ってもローファーは指定のものなんだけどね。


「他の移動手段はなかったの?」


「車かヘリがありますが....。ただお嬢様が乗り物酔いをなさったことがある、と奥様からお聞きしましたので....。」


「ふーん....。」


執事ってそこまで気を配るんだ....。


「では行きましょう。」


桜井は寮のドアを開けてくれた。





「こちら7階一番左の南側のお部屋になります。」


その部屋は....!


「すっごーい!!」


よくテレビのホテル紹介で見るようなスイートルーム!


私はあの家に引っ越すまでの16年間、あまりのお金のなさのため、家族旅行なんて行ったことがなかった。


おまけにお父さんはずっと帰ってこないし....。


私は、こんな部屋に泊まるのは初めて...!


あっ、泊まるんじゃなくて住むのか。




「ユリ!私、遊びに..... ってユリ??」


はっと気付くと私の正面に夏菜がいた。


「ユリ…どうしたの?泣いてるみたいだけど…。」


「ううん。何でもない。」


「もう、なんかボケてるんだから...。」


夏菜は苦笑い。


私、感極まって泣いちゃったんだ....。


ホントバカみたい....。


こんなんで泣いてこれから先どうするの?

< 42 / 312 >

この作品をシェア

pagetop