モノクロの音色よ鮮やかに響け

2、暗闇に落ちた日

「私も川畑さんの事を、もっと知りたいです」
「俺の、何を?」
私は思い切って聞いてみた。
「中学の思い出とか…」

川畑は私の髪に触れたまま、暫く黙っていた。
私が沈黙に耐え切れず、変な事を聞いてごめんなさいと謝ろうかと考えた時に、ようやく口を開いた。

「俺が中学の頃も、合唱部は盛んだった」
少し話してはまた沈黙が続く。

「中一のコンクールは俺がピアノの伴奏をした」
CDで『別れの曲』が流れ出す。
川畑は曲が終わるまでの間ずっと耳を傾けているようだった。

私は少しもどかしかったけれど、急かさず川畑のペースで話してくれるのを待った。
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