モノクロの音色よ鮮やかに響け

2、黒ずくめの異端人

川畑邸のチャイムを鳴らすと、返事を待つ時間もなく、インターホンのスピーカーから
「開いてる。入れ」
と一言、若い男の声が返って来た。

想像していた通りの威圧的な台詞だが、声はさほど低くなく、テナーのよく響く声は思ったより怖くなかった。
すぐにプツッと回線の切れる音。

「おじゃまします」
私は聞こえないのを知りながら呟いて、門を開けて中へ入った。

広い芝生の庭の、館へ続く石の道を、緊張しながら歩いて行く。
 
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