Tricksters
「よしっ」


 人の気配すら感じられない階段を、ゆっくりと降りていく。


 無味無臭の空気がそこにはあって、煌々と照らされた蛍光灯が目に痛い。


 むき出しのコンクリの壁と床と天井が現実的すぎて、逆に非現実の世界にいるような錯覚を起こす。


 階段は一回折り返して緩やかに降りていく、すると錆びた鉄の扉にぶち当たる。




「関係者以外立入禁止」


 俺は、関係者だ。

 もし電話をかけていなかったら間違いなく、ここで何度目かの戸惑いタイムに襲われていた。

 約束をしていた俺は強気だ。


 怪しい錆びた鉄の扉は、人を跳ね避けるようにドンとそこにある。


 ギーッと嫌な音がして、重くて冷たい扉を気を付けて開いた。



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