Tricksters


「社長、なんでここがわかったんですか?」


「さっきコンビニで買い物してたら、泣きながら走る李花ちゃんを見たんだよ。

慌てて追いかけたら、『淳一と別れた』って言うから……

それで心配して来たんだよ。


入っていいか?」



「あっ、はい。
散らかってますけど、どうぞ」


社長は日に焼けた顔で、ニッと笑うと白い歯を見せる。



「すごいマンションだな? 彼女が心配になる気持ちわかるよーな気がするな」


社長は、ピラミッドの空き缶を見て感心したように大きく頷いた。



「ちゃんと事情を説明して李花が信じてくれればいいだけの話です。

前いたアパートの上に国道が作られるって

役所とか行けば、わかりますよね?」


「そうだな。

でも、その簡単なすれ違いが取り返しつかない事になるんだよ……俺みたいにな…………」


すれ違い。
自己破産のことか






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