Tricksters


「ゼン所長が、淳一くんは新人だから教育してやってくれって私たちに言ったんでしょう?」


「もう、お試し期間終了でーす。
はい、皆さんお仕事してくださーい」



集まってた人たちが、所長室を追い出されてセラミックのドアが閉まる。

所長室には、俺とユカリさんとアイツだけになる。


「俺って、完璧雑用係だな」

「他に、何ができんだよ?」


アイツに、鼻で笑われても何も言い返せない。

実際に、トリックスターズの一部を覗く社員は優秀な奴が多い。

活気ある社内の雰囲気
飛び交うディスカッション


俺に、その中に入れと言われたキツい。


しかも、所属は販売促進部なのに販売促進部らしい仕事は何ひとつやっていない。

佐藤さんたちは、いつも忙しそうにパソコンと睨めっこしながやタイピングをしているだけで何をしているのか見当もつかない。



「そんなことより、淳一

あと三分十四秒後にタカシくんが来るぞ」



「はあ?
なんでタカシくんが来るってわかんだよ!」

しかも、三分十四秒後って……

所長は、回転式の立派な椅子に座りながら

俺にもパソコン画面を見るように指さした。


画面には、『DEMEKIN』とでっかく書かれたトラックが一台うつってる。

場所は、青天目の裏口だ。
防犯カメラの映像だ。


狭い階段の先にあるエレベーターの入り口に、トラックから降りたデメキンの作業服を着た男が二人。



「あと、二分四十五秒。
まずエレベーターホールのマットを取り替えて、ミエちゃんのいる受付に奴はやってくる。

そろそろ侵入してくると思ってた。
淳一、俺はタカシくんと顔を合わせたくない。
お前が行って阻止して来い」


「俺が? 俺だって、アイツ嫌いなんだよ」


所長が、埃ひとつない机に頬杖ついて盛大なため息を吐く。



「あと、二分五秒」





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