Tricksters


「ハハハ、修理っていうより
折れてますから。

新しいものに交換させていただきます」


タカシくんは、乾いた笑い声をあげた。


「あら、そう? 悪いわね~
総務部長が宴会の席で『西遊記~』って言いながら振り回して折っちゃったのよ」


総務部長、柳田さんか……

別名、禿柳と呼ばれるファンキーな人だ。


頭皮が若干寂しいオッサンだ。



タカシくんは、一瞬恨みがましい目線でトリックスターズの扉を睨み付ける。

「すぐに、新しいのをお持ちしますね」


胸をなで下ろした俺に、尾林さんはお喋りを続けた。



「あー、よかった!
禿柳部長がバカなことするから、掃除のおばちゃんたち困ってたのよー

そう言えば、掃除のおばちゃんの旦那さん。
風邪がなかなか治らないからって病院行ってレントゲン撮ったら

肺に影がうつったんですって!」



尾林さんは、眉をハの字にさせて
今世紀最大の同情めいたため息をつく。


「息子さん、来年大学受験なのに……」


そこは、まさに悲劇的ドラマのワンシーンの様な沈痛な雰囲気。


< 220 / 305 >

この作品をシェア

pagetop