Tricksters


それを、複雑な気分でスーツのポケットにしまった。





俺、何やってるんだろ?

何がしたいんだろ?





「淳一くん、よかったわね。びっくりもっぷが商品化されて

ゼンの楽しそうな顔、久々に見たわ」


ユカリさんも嬉しそうに顔を綻ばせる。

ユカリさんが、こんな表情する時の視線の先には、いつもアイツがいる。



「タカシくんは、上手く追い返してくれたのね? ありがとう」


「いえ……」


「ゼンは、どーしても顔合わせたくないって言うからよね」


「そうっすけど……」


タカシくんは、それを予想して
俺にアイツの話をしに来たんだ。

俺が、“何か”をやらされるのを知っててタカシくんはタカシくんで動いている。


勝手な予想だけど、脅迫状はやっぱりタカシくんの野郎が送ってきたに違いない。
タカシくんは詐欺師だ。


それでアイツは、ひょっとすると
タカシくんに出し抜かれているのかもしれない。



タカシくんは、確実にアイツの裏をついている。



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