Tricksters



沈黙に耐えきれず、テレビの電源をいれてみた。

そういえば、前に喧嘩した時も
俺はこうやって沈黙に耐えきれずテレビをつけたっけな

あの時は、まだアパートに住んでたから体育座りの李花も手を伸ばせば触れられる場所にいた。


この部屋は広すぎて、李花までの距離が遠すぎる。



『シャパシャパシャパ♪ シャパネットガタガタのテレビショッピングのお時間ですよ!』


げっ!


でた、シャパネットガタガタ!


この曲聴くと、アイツにおちょくられてるみたいでムカつく。


「あ……シャパネットだ……」


李花が、顔を上げた。




『お待たせしました!
シャパネットガタガタの時間ですよー!

はい、テレビの前の皆さん!
お仕事サボって自宅でのんびりしているサラリーマンも!
彼に謝りたいけど素直になれない女の子も!

今は、シャパネットのおっ時間でぇーす!』



…………。




それって、俺たちのことか……?


唖然としながらも、テレビ画面を凝視した。



『本日は、またまた新商品をご用意しております!

なんと! なんと!

こちらの商品は、まだ市場(しじょう)にすら出回ってない貴重な商品!』


真っ赤なネクタイをしたスーツ姿の男が、見慣れた棒を取り出した。


『この棒、なんだと思います?』
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