Tricksters



─────マンションの立体駐車場から自分の愛車を出すと、ジャージ姿でエンジンをふかす。


コンビニまでの短いドライブだ。


目的地に着くと、何の迷いもなくコンビニに入り

李花のヨーグルトと、サンドイッチを確保。

ヨーグルトの細かい注文はなかったけど、李花が朝食べるヨーグルトはりんご味って決まってる。


腹が減ってる俺は、ボリュームのありそうなものを選んで次々に買い物をする。

暫く逃亡するならと、李花が好きなティーンズ雑誌も買うことにした。


「李花も、そろそろこういうの卒業すればいいのにな」


「よう、淳一! それ、李花ちゃんが好きそうな雑誌だな?」


俺の背後から、肩越しに覗き込むのは……



「佐伯社長!」

社長は、スーツにシャツのボタンを二つ外した姿で俺を見ていた。



「淳一の車が停まってたから寄ったんだよ。この前は、李花ちゃんが泣いてたから寄ったんだけどな

このコンビニとお前たちとは、不思議な繋がりがあるんだな」


ハハハと軽快な笑い声。
それでいて周囲に迷惑をかけるほど大声をあげてるわけじゃない。


社長は、いつでも俺にとっての理想だ。

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