【実話】かげおくり~また君に恋をしたい~
初めて乗ったバイクは、風がすごく気持ちよくてでも怖かった。


必死に背中にしがみつく私を笑いながら


「ゆっくり走ってやりたいけど、それじゃ間に合わないからな」


と、信号待ちで私を振り返って言った。


直樹のシャツからは甘いいい香りがした。


さっき香水屋で嗅いだ匂いだ。


何だっけ?


名前を思い出す前に施設に到着した。


「ありがとう。奢ってもらったり、送ってもらったりさ」


そう言うと、直樹は笑いながらヘルメットを外してくれた。


「香水何つけてるの?」


「え?アリュールだと思うけど…」


自分の手首の匂いを嗅ぎながら言った。


アリュールかぁ。


「じゃあまた今度な」


そう言って直樹はバイクのエンジンを回した。
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