HYPNOTIC POISON ~催眠効果のある毒~


この学校、どんだけ“投票”が好きなんだよ。と思わず突っ込みたくなるけど、


たかが学内の文化祭大賞と侮ってはいけない。


優勝クラスには少ないけど賞金も出るし、そのクラスで活躍した生徒には内申アップというおまけがついてくる。



有名私立の学校とは言え名ばかりで、用は金を積めばどんな馬鹿でも入学できる。


寄付金や、父兄のイベントで金を多く出した生徒たちがよりよい待遇を受け、そうでない生徒たちは何か特別に秀でたものがなければ単なる落ち零れに過ぎない。


そんな腐った学校教育の方針を見直すため一部の熱心な教師たちがこう言った“イベント”を催すのである。


―――と、これはもっぱらの噂だけど。


だけどこのクラスではそんなこと関係ないみたい。


誰も提案しようとする気配はないし、興味すら持っていないように思えた。


あたしだって面倒くさいよ。


できれば早く終わらせたい。


「なぁ、どうする?」と梶が困ったように久米に聞いている。


「うーん…決まりそうにないな」と久米も渋面を浮かべ、「ベタに喫茶店とか?」と提案した。


「喫茶店かぁ。でも普通じゃつまらないし、ここはメイド喫茶とかどう??」と梶。


「はぁ…?メイド喫茶??誰がメイドなんて格好するんだよ」とあたしが梶を睨むと、


梶と久米は揃ってあたしを見てきた。


「普段絶対やらなさそうなヤツが『おかえりなさいませ、ご主人様♪』なんて言うと萌える」


と梶が頷き、


「いいかも。鬼頭さん似合いそうじゃん。ふりふりエプロン♪」と久米は顎に手を置いてにやりと笑った。




は!?絶対やらないし!




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