君のためにできること
どのくらい、眠っていたのだろうか。


軽い消毒液の匂いが鼻につく。周りは機材と白い壁。


そこは病室だった。


俺はベッドに横たわり、中を眺めていた。真っ白で汚れのない壁。自分のアパートではないことを認識するのに時間はかからなかった。


「気がつきましたか?」


横を見ると、年配の看護師が立っていた。


「俺は・・・どうしたんですか」


「殴られて、軽い脳震盪を起こしたみたいです」


「そうですか・・・」


「警察の方が、見えてますけど・・・殴った人わかりますか」


俺はそこですべて把握した。


「見てないです。被害届けも出しません」


「そうですか・・・?じゃあそのように警察の方に言っておきますね」


看護師が部屋から出たのを見計らい、俺はため息をついた。


「なつきが、まことをかばっているのか」


俺はまた横になり、殴られた唇を触る。


なつきがまことをかばう意味はわかる。ふっかけたのは俺だから俺も悪い。


「おあいこだ」と、俺は呟いた。


「なつきがあいつをかばうなら俺も・・・できることなんて、これしかないよな」


俺は、また眠りについた。
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