揺れない瞳
読み終えたメールをいつまでも見つめ続けるけれど、溢れる涙のせいで、文字がはっきりと見えなくなる。

携帯を強く握りすぎて、手の震えが止まらない。

コートを脱ぐ事もなく、リビングの真ん中で立ち尽くして、ただ涙をこぼして動く事が出来ない……。

「今更……どうして、私に会いたいのよ……っ」

嗚咽に近い声が、たまらず出てしまう。その声は低くて、まるで自分の声じゃないみたいだ。

ひくひくっと、涙が止まらなくて、体の奥から湧き上がる悲しい感情。
そんな、突然私を襲う感情を、どう処理していいのかわからない。

小さな頃、心から側にいて欲しいと思っていた時には側にいてくれなかった父なのに、どうして私が大人になって、ちゃんと自分の道を進み始めた時に、そんな優しい言葉をかけてくれるのか、わからない。

私に会いたいってどういうこと？
他の誰でもない私に会いたいってどうして？

「う…っ…もう、嫌だよ」

さっき、央雅くんの気持ちをようやく認めて受け入れただけでも、私の心は壊れそうだったのに。

父からのメールは、私の心全てを崩すほどに、強い力を持っていた。
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