揺れない瞳



大学生になってから始めたバイトは、大学から家に帰る途中の駅にあるカフェ。
オープンテラスが有名で、ガラス張りの外観の可愛さに若い子達から会社員の人まで。
多くの人が集まる。

週二日だけ、夕方の数時間働かせてもらっている。
店長の加賀さんは、芽依さんの学生時代のお友達。

たまたま芽依さんの家にお邪魔していた時、加賀さんも遊びに来ていて紹介してもらったのがきっかけ。

バイトの子が一人やめる事になって困ってる話が出て、何となく私に視線が向けられて…。

『とりあえず週二回あたりから始めてみない?』

加賀さんは、まるで私にすがるような目で私の手を掴んで。

もう離さないとでもいうように頼みこまれた私はどうしていいのかわからなくて、思わず芽依さんと夏基さんに顔を向けた。
バイトをした事がなかった私。
興味はあるけれど、自分に何ができるかもよくわからなくて。
したくないというより、できるとは思えなくて。

それでも、芽依さんに

『意外に向いてるかもしれないよ』

と優しく後押しされた事で、私の初めてのバイトが始まった。

三ヶ月が過ぎた今、制服にも馴染んで。
仕事もある程度スムーズにこなす事ができるようになったせいか、お客さんとのやり取りも笑顔でできるようになってきた。

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