揺れない瞳

自分の中に生まれる綺麗でない感情に戸惑いながら、それでもやっぱり央雅くんが好きで。
どきどきする気持ちをを楽しみながら、年末を過ごしていた。

年末はバイトに忙しい央雅くんと会える時間は限られているけれど、私のバイト先に来てくれたり、央雅くんの自宅に私が訪ねたりしながら、毎日を送っていた。
央雅くんのご両親は、私が一人暮らしだと聞いた途端心配してくれて、

『女の子の一人暮らしは物騒だから、今日は泊まっていきなさい』

と強く言い張っては私を泊まらせてくれる。
気付けば私専用のお布団が用意されていて、以前は芽依さんが使っていたという部屋を使わせてもらうようになった。

大病院の勤務医というご両親の職業柄、家にいない日も多いけれど、そんな時にも央雅くんの家に泊まっていくようにと、私の携帯にメールが入る事も増えた。

成り行きで交換したメールアドレス。
恋人のご両親とメールのやり取りをするのって、世間では普通の事なのかな……。

それすらよくわからないくらい、央雅くんとのつきあいの中で戸惑うことは多い。
それが楽しくもあってときめくことでもあるんだけど……。

そして、私の父さんからも毎日メールが届くようになった。
あの日ちゃんと会って、二人の距離はいっきに縮まったと思う。

以前なら無視していた父さんからのメールにもちゃんと返事を返すようにしたし、またゆっくり食事に行こうと誘われれば受け入れて。

決して甘い親子関係ではないけれど、これまでの時間を取り戻すかのように、いい時間が流れている。

そして、今日届いたメールには。

『愛子と、結婚式を挙げる事にしたんだ。結も出席してくれないか?』

遠慮がちな文面。
きっと、私がどう受け止めるのかを気にして作ったに違いない。
いくら関係が改善されつつあるとはいっても、父親の結婚式に平気で出席できるほどの強い絆はまだうまれていないから。
何度も何度も迷ってこのメールを送信したんだろうと思う。
その様子がたやすく想像できるくらいには父さんの事がわかるようになった。

そして、意外にも、その短い文を何度読み返しても、私の心は落ち着いていた。

驚くくらいに、平気だった。













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