鬼
どんよりと今にも降り出しそうな厚い雲が、風に流れゆっくりと位置を変えていく。
湿気を帯びた温い風がオレたちの間を通り抜ける。
風の使い手であるアイビィを相手にオレはどう攻撃を繰り出そう。
ここには相手の武器になり得る風が吹いている。
それはもう嫌というほどに…。
どう考えてもオレには不利だ。
「…何だか雨が降ってきそうね。」
アイビィは厚い雲に覆われた空を見上げて呟いた。
「そうだな…。」
釣られてオレも空を見上げた。
「じゃあ、雨が降る前にちゃっちゃと始めちゃいましょ!」
まるで膨大な量の仕事を片付ける前に言う台詞のようだ。
2人で仕事に取り掛かれば、短時間で終わらすことが出来る、そう言っているように聞こえた。
しかし、あながち意味は間違ってはいない。
お互いがやる気を出せばこの戦いには決着がつく。
…まぁ、やる気を出さなければいけないのは、オレの方なんだけどな…。
そもそも、”やる気”って何だ…?
オレが鬼になることか…?
相手が勝手に戦うと言い出したわけで、オレはそれに”やる気”を出さなければいけないのか?
シュウは昔から戦うのが好きだったけど、オレはそこまで戦うということが好きではなかった。
戦うことに何の意味がある?
そんなもの、やりたいやつが勝手にやればいい。
オレまで巻き込まないで欲しい。