他がために悪はある
他がため


身も心も、他人で汚れていた。


他人を殺し、殺した残骸が体を犯す。


其は、血潮の軍人。

数多の屍を踏み越えし、徘徊する黄泉であり、常世に招かれし成れの果て。


戦いにおいて、敵はあり。

闘いにおいて、敵はなし。


生物を無生物に変えては、咆哮をあげ。そこで初めて気づこう。


――まだ、生きている。


そうやって其の者は、自分を振り返る。生きている自分を振り返る。


前を向いて、また血潮を浴びるために――


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