Liberty〜天使の微笑み
第8話 身勝手な思い
楽しい時間は、あっという間に過ぎてしまうもので。
空が暮れ始めた頃、ステージの方で準備しているのか、何だか慌しくなってきた。
「そろそろ始まるのかなぁ? 作品って、何かのロゴデザインとか?」
「いや、今回は違うのにしたんだ。ほら、オレ総合だから、一通りのことは習うだろう?」
確か、デザイン科は二年まで色々と学んで、三年から個別の分野に分かれるんだっけ。
「今回は……服を、作ってさ」
少し顔を赤らめながら、ぽつりそんな言葉を口にした。
「服って、どんなの? 男物の洋服?」
「まー……それもショーが始まるまでのおたのしみ、ってことで」
もう少し待ってねと言い、ステージを目指し歩いて行く。
ショーまでは、あと一時間ちょっと。その時を待ち遠しく思っていると、強く肩を掴まれて、
「よ、よかった……!」
そこには、息を切らせた様子の美緒がいた。
しまった……売り子の約束、すっかり忘れてた!
行かなくてごめんと謝ると、そんなことはどうでもいいと、美緒は急いで来るようにと言う。何があったんだろうって急いで付いて行くと、連れて行かれたのはデザイン科のある棟。足早に教室へ入れば、そこには険しい表情をした人たちがいた。
「さくちゃん連れて来ました!」
「あぁ、悪いな福原。――橘」
真剣な様子で、先生は橘くんに近付き、続きの言葉を発する。
「お前の作品だが……すまない」
頭を下げる先生を見て、嫌な予感がした。
周りの雰囲気を見ても、これから言われるのは……きっと、よくないことだ。