Liberty〜天使の微笑み
第9話 戻された時間


『なんで着ないの!? 似合ってるんだから着なさい!』


 嫌だ……だって、チクチクするのに。

 用意されたのは、フリルが付いた可愛らしいワンピースと靴下。けれど、フリルの部分が肌に刺さるような感覚があり、着ることを拒絶すると、母は更に機嫌を悪くした。


『ほら、ハヤク着なさい! ママに逆らうの!?』


 髪を鷲掴みにされ、無理やり立たされる。

 こんなことをされるぐらいなら……もう、大人しく服を着た方がマシだ。


『ちゃんと笑うのよ?――なんなのその顔! ちゃんとしなさい!!』


 初めて会った人と並んで写真を撮るよう言われ、私は思うように笑えないでいた。知らないおじさんに抱えられ、しかも、元々写真が苦手ということもあって、上手く笑えない私に、母をとてもはらを立てていた。





 私の意思なんて……関係ない。





 従わなければ叩かれ、髪を掴まれ、罵倒されて。



 ――そこに【私】という個人はなく。

 母が必要とする、母のために動いてくれる者。



 ――いるのは【人形】という存在で。

 空っぽの、がらんどうであることが求められた。
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