Liberty〜天使の微笑み
第12話 向き合う未来
十一月も半ばに入った頃。私はようやく、自分の家に帰っていた。
久々に戻る家はなんだか懐かしくて……自分の部屋には、まだ画材道具を出していて。雪柳を描いた時から、この部屋は止まったまま。
だから――動かさないといけない。
二日後には、純さんに会うことになっている。それまでに、私はどうしてもやりたいことがあった。それはあの日にするはずだった、あの時に感じた思いを、形にすること。
「――――よし」
イーゼルに、スケッチブックを立てかける。
今度のはB5の小さい作品ではなく、もっと大きい――F6サイズを使用することにした。
これぐらい広くないと、生き生きしないもんね。
初めて描くそれに、まるで語りかけるように絵と向き合った。
幸い、利き手である右はふつうに動かせるから、不自由はない。左は少し鈍い時があるけど、長く動かさなければ左も使えそうだった。
イメージは……そう、宇宙がいい。
どこまでも続いて。
たくさんの星が見えて。
そして主役は――あの日に見た、あのシャチ。
今まで生き物を描いてこなかったから、うまくかける自信はない。
それでも描きたいと思ったのは……その日が、私にとっての転機だから。