Liberty〜天使の微笑み
第4話 蘇る痛み


 カレから、半ば無理やり抱かれてから数日。生理ということもあって、私の気分は余計に落ち込んでいた。

 それに伴い、授業で描くデッサンにも身が入らなくて……。大会用のは仕上げたものの、スッキリとしない。


「どんどん……深みにはまってるかも」


 最近じゃあ、授業で描く絵まで納得がいかない。スランプにどっぷりはまったみたいで、どうしたらいいのかとため息がもれる。


「く~れ~は!」

「っ!?」


 突然背後から抱きつかれ、思わずビクッと体が震えた。


「ねぇ、休憩がてらにモデルになってくれない?」

「い、いいけど。別に私がやらなくても」

「紅葉が描きたいの!――ほら、そこの窓際に座って楽にして」


 ね? と言って、美緒は笑顔を向けた。

 心配……かけちゃったんだ。

 さっきから、私が描いてないことに気付いたらしい。

 窓のそばで描きたいらしく、イスを持って行って座ると、外を眺めるよう視線を向け、片手を頬へ添えた。


「ついでに、髪も結んじゃお」


 そう言って、美緒は慣れた手つきで私の髪を結んでいった。

 私の髪は腰まであるから、美緒曰く、やりがいがあって面白いらしい。美緒自身は肩ほどまでしかなく、私と同じぐらいの長さに伸ばすのを目標にしている。


「左に流してっと。ちょっと緩めの三つ編みにするね。――はい、完成!」

「なんだか……寝ちゃいそう」

「眠たかったらいいよ。あたりはもう描いてるし、いっつも紅葉の顔は見てるからね!」


 もう、また恥ずかしいこと言って。

 笑みをこぼしながら、再び外へ視線を移す。周りの木々が色付き始め、校門の近くに咲いている銀杏の木も、黄色く色付きだしていて。秋なんだなぁと、そんなことを実感していた。
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