手の平から



「見ればわかる…………冷やかしに来ることわかってたから香奈だけにバイト先教えたのに……相沢と賀山までいるし。」


井上は溜息と一緒にそう言った。



「ごめん夏樹。迷惑…だった?」


「いや…そうでもないけど……」



香奈のほんとに申し訳なさそうな顔に井上は口ごもった。
井上は香奈に弱い。




「夜だし香奈一人で来るのも危ないと思ったから。」

「バイト終わるまで待っとくから固いこと言うなって。」




私と相沢はそう言って今だに納得のいかない顔の井上をなだめた。
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