機械とヒト
一章 奪われた『ココロ』
100年前、地球星のなかにセカイという国があった。

地球全土を支配するセカイは、ひとつの王朝が支配していた。

かつてこの地球は数百もの国に別れ、別々に政治を行なっていた。しかし、地球を取り囲む大国ウチュウに対抗するため、ひとつにまとまった。

セカイ国のトップは様々な人種からなる。ヨーロッパ系、アジア系、アフリカ系、アラブ系など王朝にはたくさんの人種の人間がいる。


そして、次期トップがアジア系の娘、アサヒ姫だ。

彼女は美しい黒髪を持ち、雪のように白い肌、薄紅の頬をしている。そして朝陽のような明るい笑顔はまさに名前のとおり。穏やかで感情豊か、聡明であり、国のトップにはうってつけである。

そんなセカイ国を支配しようとしている国が、ウチュウだ。何億光年もの範囲を支配し、ほかの星たちは全てウチュウの手で支配下に置かれた。残るはそう、セカイ国だけである。

近代的な景観の街並み、魅力的な歴史、文化。そしてウチュウ国を惹きつけたのが、セカイ国に住まう人類のみが持つ『ココロ』だ。

人類には彼らが誕生した時から感情を司る『ココロ』がある。が、ウチュウ国の者は持っていない。嬉しい、悲しい、怒り、楽しい、が存在しないのである。ウチュウ国のトップに立つ王は、人類のもつ『恋慕』という感情に興味があるらしい。なんとしても『ココロ』を自分の国で造りだしたいのである。

あるとき王は、従者たちに命令した。

「感情豊かなセカイ国の姫、アサヒを連れてこい。」


ウチュウ人の特徴である白銀の瞳が跪く従者たちを見渡した。優秀な従者たちは感情のない声で返事をし、さっそくセカイ国へ攻め行った。


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