はるかちゃんと 畳ヶ池の 河童
かっちゃんを抱いている達也おじさんは、声を殺して涙を我慢していますが、抱いている腕が小刻みに震えてしまっています。

『達也…お前、泣いているのか?』
かっちゃんが聞きました。


『ば!ばかやろー!な、何言ってやがる!俺は、泣いてなんかいない!?』
『他の地域の人間は知らんが、わしの住んでいた、畳ヶ池には…ずいぶんと心優しき人間が多いんじゃな…困っている誰かのために、真っ直ぐに一生懸命になれる女の子、誰かを助けるために足を止めて、助けに来る人々、誰かのために自分の命もかえりみず、水に飛び込もうとする大人…人間も捨てたもんじゃないな?この畳ヶ池はお前たちに任せたぞ?今度生まれ変わるなら…人間…も悪く…な…い…ぃな・・・』

かっちゃんの姿が完全に消えると、達也おじさんの腕には、はるかちゃんがあげたビーズのネックレスと、ほのかちゃんがあげた水の中の生き物図鑑が残っていました。

二人はそれを抱きしめ泣きました。

声がかれるまで、涙が出なくなるまで、達也おじさんの腕の中で泣きました。
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