すべては数直線の上に+詩集
とにかくその時、雨は急に降り止んだ。

そしてその後には完全な沈黙があった。

交差点を渡る人々の足音や、規制以上のスピードで走り抜けていく車の走行音までもが突然消えた。

雨は全ての音を持ち去っていった。

でもそれはほんの僅かな時間だった。
一瞬と言ってもいいくらいの僅かな時間。
俺がふと気付いたとき、交差点にはいつもの音が戻っていた。
車の走行音、人々の足音、そして信号待ちをする二人の主婦の会話が聞こえてきた。白いシャツにインディゴのジーンズをはいた青年の足音まで聞こえてくる。
でも、聞こえてくる音は以前俺が耳にしてきた音とはどこかが違っているように思えた。
どこがどんな風に違うのかは俺にはうまく説明できないけど、でも今こうして聞こえてくる音は、20年間ずっと聞き続け俺がうんざり飽きていた音とは確かに違っていた。

奇妙なもんだな...と俺は思った。

俺はこの街に飽きて退屈していた。
何度もこの街を出ようと思ったが、その度にそんな思いはいつの間にか心から消えてなくなっていた。

どこへ行っても何も変わりはしない。
俺はずっとそう思っていた。
たとえ景色が変わっても、慣れてしまえばまた退屈な日々が続くだけだと...。

< 39 / 102 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop