【短編】十一屋(トイチヤ)~ナニワ金融道~
午後八時



「お前はここに立っとれ」


「はぃ…、

立っとくだけでいいんですか?…」

「他になんかできるんか?」


「い、いいえ」


「……、どうせ、
覆面もマフィアも普通の客も
見分けできひんやろな」

「…はぁ……すみません…」


「まぁええ。
最悪な場合は、
ケツ持ちかオトリや」


「ケツ持ち?オ、オトリって?…」


「おっ、来たな。

ほな、立っとれよ」


「はいぃ…」


城頭八は、
ゴツイ輩たちとともに
真っ黒な扉の向こうへと入っていった。


防音が完璧なのか、
辺りは静まり返る。


「はぁ…」


朝日喜は、
溜め息まじりに、
言われたとおりに扉の前に立った。



―――…



数時間が過ぎ…



「ん?」



階段を上がってくる人の気配があり、


「え?」


すると突然
暗がりに淡い電灯がついて、

日本人やら外国人の女性たちが、
男を連れて入ってきた。

暗がりでわからなかったが、
朝日喜が立つ扉の前には、
バーカウンターと
ちょっとしたフロアになっていた。


突然に賑やかな音楽がなりだして、
男女抱き合い乱れて踊りだす。


「なんじゃ!?」

驚く朝日喜。



「ボナセーラ♪」


金髪のバニーガールが、
朝日喜にグラスを差し出した。


「え、あ、…どっどうも…」


思わず受け取った朝日喜。

バニーガールは投げキッスをして、
踊りながら去っていった。


「こういう所ですかぁ…」


朝日喜は、
もらったグラスを一口飲んだ。

「うわっ!かっ、からーぃ!!?……ん…なんじゃ…」


朝日喜は、
突然に目眩いと眠気に襲われて、
その場で気を失った。


――――…
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