空と砂と恋の時計



「アジアの子供たちと掛けまして、織田裕二のドラマと解きます」

「……その心は?」

「お金がない!」


何の捻りもなかった。捕手がスライダーを要求してるのに「俺は変化球なんぞ投げれぬわ」とばかりにど真ん中に投げてきた。

しかも、ちょっとサムいし。

さっきまで風なんて吹いてなかったのに木枯らしが一枚、ひらりと私達の前で円を描いて風に飛ばされていった。

なんて場の空気を読める葉っぱなんだろう。


「金欠ならそんな妙な言い回ししないで素直にそう言えば良いのに。明日は特別に先輩が奢ってあげるわよ」

「はい。隊長。それは世間体的にマズイかと思われます」

「どうして? 別に私は金欠じゃないわよ。それと誰が隊長よ」

「船長の方が良かった?」

「そういう問題じゃない」

「いや、俺が百合さんに個人的にお金を貰ったら、まるでヒモみたいじゃん。っていうかヒモそのものじゃん」

「ヒモ……」


ヒモ。待遇者が主人の純情なペットとなり、お金を貢いで貰う。

一般的に社会不適合者の象徴。私が主人で、貴志が可愛いペット。

その主従関係の情景が沸騰寸前の脳内で展開される。


「ほらっ、貴方の大好きなお金よ。口で拾いなさい」


と、床に万札をばら撒く私。それを見て、


「あ、ありがとうございます」


と四足歩行で指定された通り純情なペットと化し、次から次へと口で拾う貴志。



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