維新なんてクソ食らえ後始末が大変でしょ、手代木の巻き
木の陰から、パチパチと拍手をしながら近づいて来る影があった。


手代木が顔を向けた。


「藤田さんか」


藤田がニヤリとして言った。


「手代木さん。

間合いが近いのを嫌った風に装っていたようだが、あんたの動きは読まれてたぜ。

俺が石を投げつけなかったら、あんたの方がやられていたな。

まだまだ、あんたには働いて貰わないといけないから、こんな所で死なれたら困るんだよ」


頼りになるが、相変わらず口が悪い男だった。


藤田が手で合図すると、林から部下が出てきて水島を縛って連行して行った。


藤田がタバコに火を付けて言った。


「早く、妹の縄を解いてやれ」



手代木が妹をおぶった。

そして家路に着こうとすると、藤田が言った。



「一ついい事を教えておいてやる。

まだ、影山は生きているぞ。

首藤にやられ、死体を始末させられたあの屋敷の下男がまだ息があったヤツを助けたと言っている。

今は傷を治しているようだがその内に現れるかもしれないから気を付けるんだな。

小石に怯むようなやつじゃないし、周到に用意してくるはずだ」


藤田はタバコの息を吐いた。


手代木達を照らす春の月は雲に霞んでいた。
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