失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】

ハードワーカー




夜中に悪夢を見て目が覚めた

内容はよく覚えてない

身体の中から嫌悪感がにじみ出して

全身をかきむしった

苦しい

この焦燥感…しばらく忘れてた

堕ちていく…

深い谷底に吸い込まれて



さびしい…

とめどなくさびしさがあふれだす

受けとめて

誰か…此処に来て…



抱いて



そのとたん

嫌悪感の渦が僕を巻き込む

兄の顔が僕を責める

(裏切るのか?俺を…)


耐えられない

身体を固くして縮こまる

胎児みたいに

布団に頭まで潜り込み

固く目を閉じる

そうやってあの軽薄なヤクの売人に

騙されて抱かれて

ここまで堕ちた…のに



さびしい

変わらない

犬みたいに電話を待ってた

あの時のまま




そうやって堕ちた地獄から

奇跡みたいに救い出してくれた彼を

傷つけて…




彼に…逢いた…い…

もう独りは…イヤだ…



でも…彼を苦しめる…僕の存在が

彼も…兄も…

僕がいるだけで…苦しむ

そして

去って行くんだ…



(君のデータは彼のPCに逐一送信し

ているからね…容態が変わるようだ

ったらすぐに連絡することになって

いる)



容態が…変わったら…

僕がもっと…苦しんだら…



思い出した




もう…生きてたく…ない…よ

でも…死ぬ前に

あなたに逢いたい

あなたに…逢いた…



そこで

意識が途切れた






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