失われた物語 −時の扉− 《後編》【小説】



「な…んで…分かるの?」

僕は一瞬ドキッとした

まさか…兄貴とのこと…

バレて…?

「ニオイだよ…お前には女の匂いが

ないんだよ…男に可愛がられてよが

ってるのが俺には見えるんだよ…

嗅いで分かるニオイじゃねぇからな

見てるだけでわかるんだ…俺と同じ

同類だからな…」



僕は笑った

安心したのと

自分のそのニオイってヤツに

そんな風にわかられるくらいの



「くっくっくっ…わかるんだぁ…

あんたには」

男はなんで笑われたかわからずに

一緒に笑った

「そうだよ…わかるんだよ」

そう言うとそいつは一気に

僕を押し倒した

「いつから?…いつから男に抱かれ

てんの?…こんな風に」

男が僕に覆い被さる

人の重さを久しぶりに感じた

「…生まれた時…から…だよ…」

「どういう意味?」

「その…まんま…の…意…味…う…

あっ…あ…」



ムダなおしゃべりも

そこまでで

後は互いの喘ぎが耳を埋めていた

しゃべろうとしても

二人ともろれつも回らなかった

それがクスリのせいだと

はっきりわかったのは

何回か抱かれてからだった







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