君ニ恋シテル
「逞ぁ!」

亜紀ちゃんが叫ぶと、逞くんはチラッと視線を向け微笑んだ。そして、ストンとまた席に座る。

亜紀ちゃんはニコニコ嬉しそう。


「はい、じゃあ続きを話します…」

今度こそ浩ちゃんの話は無事に終わり、次に逞くんとてっちゃんが立ち上がった。

その瞬間、ドキリと胸が跳ね上がる。


車内全体に歓声が飛び交う中、二人が話し出す。

「えー、まずは皆さん、当選おめでとうございます!」

「皆さんと一緒に旅行できることを、凄く楽しみにしていました」

逞くんとてっちゃんがそれぞれ話すと、またまた大歓声がわく。


ち、近い…。

目の前で話すてっちゃんを、私は直視できずにいた。

沙弓ちゃんにあの言葉を言われてから、てっちゃんと会うのは初…。

てっちゃんが私を好きなんて、そんなこと…。
でも、なんだか変に意識しちゃって…。
ドキドキして見れないよ…。

この後、全員でBoy★2の曲の大合唱が始まった。
てっちゃんと逞くんの歌声に、ファンの子達の歌声が重なる。

チラリとてっちゃんを見ると、目が合い微笑んでくれた。


わっ…!

私は慌てて目をそらす。
頬が燃えるように熱い。

もう、どうしよう…!

いつもより過剰に意識してしまう。
こんなんで告白なんて無理に決まってるよ…。

私は隣で大きな声で歌う百合香ちゃんに視線を向けた。


『私に任せて』

その言葉だけで、具体的に告白大作戦がどんな作戦なのかは全く教えられていない。

百合香ちゃん…一体どうするつもりなんだろう。

私のために張り切ってくれてる百合香ちゃん。


でも…無理だよぉー!

告白する覚悟なんて、全然できてないもん…。

そんなこんなで頭を悩ませつつも、時間はどんどん過ぎて行く。


そして…

バスの中は静まることなく、終始盛り上がり続けた。

浩ちゃんが罰ゲームで変顔をしたり、逞くんが一発芸をしたり、てっちゃんがモノマネをしたり…。


気付けばお腹が痛くなるくらい、ずーっと笑っていた。

亜紀ちゃんも百合香ちゃんも、周りのファンの子達も、笑顔が絶えなかった。


沙弓ちゃんとの熱愛報道があって、旅行に来るファンの子達の反応を少し不安に思っていたけど…大丈夫みたい。

よかった…。


そして、しばらくするとバスは目的地へと到着した。
< 519 / 679 >

この作品をシェア

pagetop