十†字†路
「おっと…今何時かな?」

ボーッと空を見ていて待ち合わせの事を忘れていた。
腕時計を見る。
ただ格好良い時計が欲しくて、高い金を出して買った。
金額通りの価値はある。
格好良いと思う。

だけど…
時間が解りづらい。
コレでは腕時計の意味が無い様な気がする。

「えっと…一時二十分、か」

約束時間は一時。
遅刻…だな。

文句を言われるだろうから、少し急ぐ。

スーツで早歩きと言うのは少ししんどいが仕方無い。

目的地のカフェレストランが見えた所で、足を緩めた。

「いらっしゃいませー、一名様ですか?」
「いや、ツレが先に来ていると思うんだが…」

見回すが居ない。
トイレだろうか?

「あー、居ないみたいなんで、とりあえず適当な席で」
「はいわかりましたー。コチラへどうぞー」

案内されるがままに席に座る。
コーヒーと軽いランチを頼み、再び辺りを見回す。

「居ない…?」

時刻は一時半。
あまりにもワタシが来るのが遅くて帰った…というには早すぎるか。

となると考えられるのは…彼の性格上……

「いらっしゃいませー、一名様ですか?」
「いや、先に一人来ているハズ……お、いたいた」

遅刻、だな。

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