十†字†路
呼び出しボタンを押し、携帯を耳に当てた。

ピ、ポ、パ、ピ…と電子音が響く。
続いてトゥルルルーとコール音…と思いきや、トゥで電話に出られた。

「早ッ!?」
「もしもし」
「先生遅いですよ!」
…ですよ!
「ごめんごめん」
「もぅ…今どこですか?」…ですか?

アレ?
さっきから微妙にエコーするような…?

「今ね…何処だと思う?」
「まさかまだ家とかじゃないでしょうね?」
…しょうね?

まただ。
なんだかエコーとは違う、私の声だけ遅れて聴こえるような感じ…

「今ね、庵樂の後ろ」
「……え?」

振り向くと確かに先生はいた。
なんだか凄いお洒落な格好で。

「先生!何ふざけてるんですか!」
「いやー悪い悪い。昨日酒飲んでたからさ、寝坊しちゃった。で、遅れてきたら庵樂の後ろ姿が見えてね、携帯触り始めたから私も携帯取り出して驚かそうかと」

アハハと笑う先生。
まだ酔っ払ってるのかもしれない。

その証拠にいつもと違う、遊びに行く様な格好。

短いジーンズに小さめのシャツ、その上に少し大きなキャミソールを着ていた。
髪をボサッとまとめ上げ、ピンで止めている。
化粧もいつもより派手。

先生はホントに先生?

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